2023 年 07 月 25 日 Yocto Project よもやま話
今回のブログは、Yocto よもやま話 第 9 回 「Yocto Project の最新動向」の続編として、最新の Yocto Project の状況についてお知らせします。
3 月のブログで紹介した内容は、悲観的な内容も多かったのですが、今回は明るい話題が多くなっています。Yocto Project DevDay オープニングセッションのプレゼンテーションではPlatinum Members として、新規に EXEIN が加盟、Qualcomm が復帰、
Silver Members として新規に bootlin, Konsulko Group, SMILE の 3 社の加盟がアナウンスされています。
加盟メンバー企業の増加によって、Yocto Project の財政はより安定したものとなり、この後説明する複数の事業を行うことが可能となりました。 なお、DevDay でのプレゼンテーションの後、それまで sliver member であった LG が platinum member に変更となっています。
前回の最新動向の中でとりあげた Yocto Project の ARCHITECT の Richard Purdie が Linux.com に寄稿した記事でも言及している 5 ヶ年計画[既に実現済のものも含まれています]が始動しました。
メンバー企業に所属するエンジニアが、企業から支払われる賃金の中で開発を行うのではなく、Yocto Project から業務委託費を受け取って開発作業を行う体制を作ることが可能となりました。
2023 年 6 月 14 日に公開されたページ(Yocto Project Engineering Request For Quotation)では、見積もり依頼として以下の項目が記載されています。
上記内容に関して、後述する ELC の中で Yocto Project の Advisory Board Member の立場で Philip Balister 氏が「The Yocto Project - Where We're Going and What's Next」というタイトルでプレゼンテーションを行っています。
プレゼンテーション中で発せられた質問も含めて 7/12 には、FAQ も追加されています。5 か年計画についての RFQ の提出期限は既に締め切りとなっております。応募された方の活躍に期待しています。
2023 年 6 月 27‐30 までプラハで実施された Embedded Open Source Summit (EOSS)の併設イベントとしてYocto Project DevDay が開催されました。Yocto Project DevDay が実会場で開催されるのは、2019 年 8 月に San Diego で実施して以来 3 年 10 ヶ月振りのことでした。
プレゼンテーションのビデオは執筆開始時点では公開されていなかったため、ビデオ公開後に詳細なイベントの内容をお伝えする予定です。
EOSS の中で実施された Embedded Linux Conference(ELC) で実施されたプレゼンテーションのスライドおよびビデオへのリンク集は、Core Embedded Linux Project (CELP)が運営する elinux.org 上で公開されています。
Yocto Project そのものを取り上げたプレゼンテーションは、前述の「The Yocto Project - Where We're Going and What's Next」の他、 「BoF: The Yocto Project and OpenEmbedded Organization」というタイトルで、ディスカッションの時間が設けられていました。
Philip Balister 氏はこのセッションでは OpenEmbedded の立場で、新規に Community Manager に就任した Josef Holzmayr 氏の二人が司会進行をつとめています。
2020 年 4 月にリリースされた Yocto Project 最初の LTS である Yocto3.1 dunfell は、従来のプロジェクトのメンバー企業に雇用されているエンジニアが業務の一環として Maintainer としての業務を担当する形態から、Yocto Project が資金を提供して業務を委託する最初のバージョンとなり、プロジェクト発足時から参加している Steve Sakoman 氏が Maintainer に就いています。
LTS の開始時、サポート期間は原則 2 年として始まりましたが、2021 年 9 月にdunfell に関してサポートか 4 年に延長となりました。
延長の理由として、2021 年 10 月リリースの Yocto3.4 Honister において、上書き演算子が従来の "_" から ":" に変更されるという、大きな変更が有り、次の LTS に移行する際に充分な期間を取れるように延長の要望がありました。また COVID-19 の影響で実会場でのイベントの開催が行えず資金面に余裕があったため、当面の延長を dunfell に限定した形で実施されました。
Yocto Project の技術面の意思決定機関である、TSC は、Yoto4.0 kirkstone についても 4 年間、今後リリースされる LTS は 4 年を原則としていきたいとの要望を Yocto Project の運営の意思決定機関であるプロジェクトメンバーで構成される Advisory Board に伝えており、Yocto Project の wiki の Relases のページでは以下のように記載されていました。
The 3.1 series was originally planned for two years but extended to four. No decision has been made about 4.0, it would be a decision by the project members who fund it. The project in unable to commit to funding the work multiple years in advance.
この記述は、2023 年 6 月 26 日のプレスリリース発表後 Yocto Project のArchitect である Richard Purdie 自身によって以下のように変更されています。
The 3.1 series and 4.0 was originally planned for two years but extended to four. Future LTS releases are planned for 4 years.
DavDay のオープニングセッションでは One more thing としてアナウンスが行われています。
リリース時より 4 年間のサポートとなる Yocto4.4 のコードネームは、Scarthgap となることが 7 月 13 日に公開されています。
Yocto Project からリリースされる poky のコードネームですが、3.2 Gatesgarth 以降はイングランド北部の湖水地方の地名が採用されています。Scarthgap も、Gategarth から南南西に向かう登山道の途中にある標高 445 メートルの峠の名称です。
筆者自身も経験していますが、従来使用できていたツールがメンテナー不在で使用できなくなるケースがいくつか見受けられ、この先どうなるのか不安に感じる部分がありました。
5 ヶ年計画を絵に描いた餅に終わらせないため、昨年末に Linux.Com に Architect である Richard Purdie が寄稿した記事がきっかけで必要な資金の調達が可能となり、今までリソース不足で手が付けられなったツール類の再整備が始まることは、Yocto Project の利用者にとって大変うれしいこととなります。
外から見ているとあまり見えていない Yocto Project の現状について、今後も何らかの変更があった場合はお伝えしていきますので、引き続き愛読の程宜しくお願いします。
次号は、Yocto Project DevDay でのプレゼンテーションの内容紹介を予定しています。
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