2022 年 04 月 13 日 採用製品 Timesys Embedded Board Farm
サイバートラストでは組込み機器や IoT 機器を製造販売する事業者に向け、組込み Linux OS である EMLinux を開発・提供しています。EMLinux は、組込み機器や IoT 機器に必要なネットワークや GUI 用のソフトウェアパッケージを標準で提供していることもあり、実機での検証作業は重要な開発プロセスの一部であるといいます。
一方で、実機を用いての開発・検証作業の際には実機を置いている会社に出社して作業する必要があり、テレワークなどさまざまな働き方への対応を考えた際に課題がありました。サイバートラストではこうした課題にどのように取り組んだのか、サイバートラスト株式会社 IoT 技術本部の豊岡 拓さんにお話を伺いました。
サイバートラストでは 2012 年の森林浴メンタルヘルスケアプログラムの実施などをきっかけとして、新型コロナ禍よりもはるか以前よりテレワークを制度として導入しており、昨今ではテレワークのみならず地方移住など、様々な働き方をしている社員が多く活躍しているといいます。
豊岡さんもそうした制度を活用し、「テレワークをすることで通勤に伴う時間や疲労を削減できるのは大変ありがたいと思っていました」と満足している従業員の一人でした。
「その一方で、オフィスに来なくてはならない仕事も少なからずあり、私共の部署では、組込み機器の実機を使った開発・検証などがそれにあたりました。組込み Linux の開発では実機を利用して開発を進めるため、作業を行う場所に評価ボードなどの実機が必要でした。テレワークを行うためには機材を自宅に持ち帰る必要がありますが、そうすると他の人が利用できなくなります。一般に入手可能な評価ボードでも、ものによっては何十万円もするような高価なものが多いのでコスト的に複数用意することも難しく、製品ボードなどはそもそもセキュリティ的に社外に出すことができない場合も多くあり、現実問題として実機を利用したい場合は出社する必要がありました。」
「また、1つの機材を複数人で共有するためには、いつからいつまでは誰が使う、などの調整を行う必要があり、ある意味本質的でないコミュニケーションに時間をとられてしまうという課題もありました。」
そうした状況に追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスでした。サイバートラストも従業員の安全確保を目的に、テレワーク中心の勤務形態になったと言います。
こうした背景もあり、豊岡さんはテレワーク環境においても実機を使った製品開発を続けられる方法を模索し始めました。
「従来においても、コンポーネントレベルでは電源の ON/OFF をネットワーク経由で制御できる装置や SD マルチプレクサーなどがありましたが、リモート開発としてはこれだけではまだ機能が全然足りませんでした。リモート開発の仕組みを自社による内製で作ろうかとも検討していましたが、やはり自社開発ですと開発コストも大きくかかりますし、時間もかかります。」
そうした中、突破口として採用したのがリネオソリューションズ社より提供されている Timesys Embedded Board Farm(以下 EBF)でした。
「何か良いソリューションはないかと考えていた中で紹介を受けたのが EBF です。リモート開発をシステムとしてワンストップで提供されているものは世界を見渡しても私が知る限りでは EBF しかなく、一択という状況でした。」
時間的な面でもコスト的な面でも比較をしたうえで自社開発ではなく EBF を採用したサイバートラスト。初期導入については多少のトラブルはあったものの、リネオソリューションズのサポートおよび提供元である米国 Timesys 社によるサポートを通じ無事稼働環境を構築することができました。
「当社ではかねてより VPN 環境が設定されていたので、リモートから社内ネットワークに接続することができていました。また、社内のサーバーに EBF のソフトウェアをインストールし EBF サーバーに接続すること自体も問題なく行うことができました。」
「一方で環境構築の際に SD カードの相性という問題に遭遇しました。当初は原因がわからず苦慮しましたが、リネオさんに解決に向けて動いてもらい Timesys にも働きかけてもらうなどをして問題解決に尽力していただきました。」
EBF の導入によりリモートでの開発が可能になった豊岡さんのチームですが、チーム内での機材利用が効率化したのは想定外の嬉しい誤算だったと言います。
「EBF を利用することで手元にボード(DUT : Device Under Test)を置く必要がなくなり、リモートでの操作が行えるようになりました。構築済みの作業環境をネットワーク越しに共有できるので、貸し借りの手間が省け、個別の設定作業の時間が節約できるようになり、作業効率は物理的な環境よりもあがりました。」
EBF ではウェブカメラを通じて実際のボードの現在の状況を確認することもできます。
「組込み機器でもディスプレイ出力がある機器などもあります。画面出力が正しく行われているかを確認するのに EBF のウェブカメラ映像のストリーミング機能を使っています。性能的にも問題はなく、リモート環境においても実際のボード環境を確認するのに役立っています。」
また、豊岡さんのチームでは EBF と内製している自動テストシステムを組み合わせた、テストの自動化を強化したいと言います。
「まだ構想レベルですが、自動ビルドの仕組みと組み合わせて、ビルドした OS をそのまま EBF により自動でテストに投入する仕組み作りを考えています。これも EBF が API を提供しているからできることであり、これが実現すると、現在人手で対応している部分の負荷軽減ができると考えています。」
EBF を導入して、満足のいく結果を出している豊岡さんチームとそのメンバーの皆さん。今後はサイバートラストの他の部門などでも EBF の利用を検討していると言います。
「働く場所に囚われないだけでなく、ボードの共有の効率化、他のツールと組み合わせての作業の自動化。これらが EBF の最大のメリットだと考えます。」
※ 本記事の内容は 2022 年 4 月 取材時のものであり、組織名や役職等は取材時点のものを掲載しております。
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